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想いに寄り添う家づくり「アトリエ橙+建築家・奥山裕生」(東京都・板橋区/練馬区)

磯崎建築と聖地巡礼

<2018-12-06>

構造計算のセミナーに参加するため、つくばへ。つくばと言えば、建築関係者の中では、磯崎新さん設計の「つくばセンタービル」が有名です。

バブル時代、建築界はポストモダン全盛でした。当時を振り返り、ポストモダンを代表する建築を一つ挙げるとするならば、多くの建築関係者が、磯崎さんのつくばセンタービルを挙げることでしょう。

つくばセンタービルは、ポストモダンの特徴である歴史的な引用を随所に散りばめた建築です。特に、建物前にある広場は、ローマのカンピドリオ広場を反転したデザインとして広く知られています。

ポストモダン全盛当時、建築学科の学生だった私は、記号化された奇抜な建築群に対し、どこか冷めた目で見ており、いずれ時代に淘汰されていくだろうと思っていました。このつくばセンタービルに対しても、同様の感想を持っていたものです。

しかし、今回、改めて、この地を訪れて感じたことは、当時の磯崎さんは、自分の作家性を抑制し、ポストモダン建築への多少の皮肉を込めて、その時代を忠実に体現してみせたのではないかと思いました。時代を読み解くことに優れ、変貌自在の天才建築家である磯崎さんだからこそなせる技だったのだと思います。(的外れな解釈だったらごめんなさい。)

良くも悪くもあの時代を写し取ったこの建築物は、平成も終わろうとしている今の世の中の視点から見れば、明らかに時代から取り残され、閑散として寂しさを覚えます。ひとけのない平日の昼間に訪れると、まるで、遺跡のようにも感じ取れます。ポストモダン建築の遺跡です。あるいは、それも磯崎さんが意図していたことなのかもしれません。

ところで、冒頭に書き記した「聖地」というキーワード。ポストモダンの聖地という意味ではありません。この広場は、知る人ぞ知る戦隊ヒーローの聖地なのです。戦隊番組では、毎年、ヒーローが変わっても、必ず、ここがロケ地として登場します。広場で悪の集団が暴れ、善良な市民が襲われ、危機一髪の次の瞬間、高い岩場の上を見上げると、そこには我らのヒーローが燦然と輝き、変身ポーズを決めているあのシーンです。

時代遅れを感じながらも、それは未来の世界での廃墟を感じさせる不思議な場所、それが、このつくばセンタービル前の広場であり、戦隊ヒーローが戦うには絶好のロケーションとなっているのです。

磯崎さんも、まさか、戦隊ヒーローの聖地を設計することになるとは思いも寄らなかったと思いますが、名建築はこうして時代を生き延びていくのかもしれません。(本当か)

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