マンションリノベーションの基礎知識

建築家とマンションリノベーションという選択

第二章 中古マンションの選び方

2-1 築年数

 1981年以降に竣工した物件(正確には確認申請が1981年6月以降に提出されている物件)を選びましょう。これは、1981年6月に耐震基準が大きく変更になっているためです。1981年以前の物件は、旧耐震物件と言われ、資産価値も低く見られる傾向にあります。もし、1981年以前の物件の購入検討を行う場合は、耐震診断、耐震改修の実績があるかどうかを確認しましょう。

 築年数が浅い物件(築5~15年の物件)は、物件価格がまだ下がっておらず、中古マンション購入+リノベーションという選択のメリットが薄まりますので、おすすめ度は△です。また、まだ大規模のリフォームをしている住戸が少なく、住民がリフォーム慣れしていないため、長期間のリノベーション工事は神経を使うという側面もあります。

 築年数が30年を超えると、融資の面でも、35年ローンなど長期のローンが組みにくいなど、不利になることがありますので、長期の住宅ローンを検討される方は注意が必要です。

 結論としては、築15~25年前後の物件がおすすめです。

2-2 構造形式

まず、チラシの間取りからわかるポイントとして、構造形式が「ラーメン構造」か?「壁式構造」か?という点。「ラーメン構造」(下図左)とは、太い柱と梁で構成されている構造です。室内には、柱や梁が出っ張ります。「壁式構造」(下図右)とは、壁で建物を支える構造のことを言います。

間取りが変更しやすいのは、「ラーメン構造」のマンションになります。「壁式構造」の場合は、コンクリート部分の間仕切り壁は壊すことが出来ないので、大きく間取り変更を行うことができません。

ただ、「壁式構造」の場合は、柱や梁の出っ張りがなく、室内の空間がすっきりしていますので、大きく間取りの変更を必要としない場合は、あえて「壁式構造」の物件を選ぶのも、得策です。

2-3 設備配管

設備配管についても、チェックしておきましょう。ただし、これは、チラシからではわからないので、専門家か不動産会社に確認する必要があります。ポイントは、床下の給排水管です。床下の給排水管が、コンクリート床の上を通っている(上図左)か、下(階下の天井裏)を通っている(上図右)かの確認です。

築30年以内のマンションであれば、ほとんどの物件がコンクリート床の上を通っていますので大丈夫なのですが、築古の物件の場合は、設備配管が、上図右のように、階下の住居の天井裏を通っているケースがあります。

この場合は、水まわりの移動が難しいだけでなく、老朽化した給排水管の更新を行うことが出来ないということに陥ってしまいますので、このような物件の購入は避けることをおすすめします。

2-4 修繕積立金

マンションの販売価格は、安ければ安いほど、購入者にとっては嬉しいものですが、修繕積立金だけは、安いからと言って喜んではいけません。むしろ、適切に値上げを繰り返し、高い方が安心感があります。

修繕積立金は、マンションの共有部の修繕工事を行うために、毎月、住民が管理組合に納めて積み立てておくお金のことです。

世帯数や築年数、マンションの設備などによって、金額はまちまちですので、相場がわかりにくいのですが、私自身は、月額12,000円~18,000円(築15年を想定)を目安として、物件を探しました。

一般的に、新築時は、修繕積立金は低く設定されておりますので、築年数と共に、住民の合意のもと、値上げをしていく必要があります。つまり、築年数と共に修繕積立金がきちんと値上げされているマンションは、住民の管理意識が高く、適正な大規模修繕計画が行われている可能性が高いマンションと考えられます。

マンションを内覧する前に、チラシで修繕積立金の額をチェックしてみてください。無駄足が省けるかもしれません。

2-5 内覧と購入前のチェックポイント

チラシである程度、候補を絞ったら、不動産会社さんに連絡を取って、内覧へ出掛けましょう。内覧で、チェックするべき項目をあげておきます。

・天井高さ
・分電盤の契約容量
・給排水管のルート
・換気ダクトのルート
・玄関土間と廊下の段差 など

以上ですが、専門的な内容を含みますので、可能であれば、リフォームの設計者に同行してもらい、説明を受けることをおすすめします。(上記の内容から、リフォームできること、できないことの判断がある程度、出来ます。)

上記以外では、住居の外、つまり、共有部分をチェックしましょう。

・掲示板:理事会や総会が定期的に開催されているかどうかなど、管理の様子が推測できます。
・郵便ポスト:空き室率や事務所使用の有無などがわかります。
・ゴミ捨て場:住民のマナーや管理人さんの仕事ぶりがわかります。
・自転車置き場:小さいお子さんがいる若い世帯がどれくらいの割合か推測できます。

また、購入前に入手しておきたい資料や情報としては、以下のようなものがあります。

・マンションの管理規約、特にリフォーム工事に関する規約
・修繕積立金の滞納件数と金額
・長期修繕計画書と履歴

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